house fabricscape
- type :
- House
- location :
- 大阪府東大阪市
- date :
- 2019.10
- size :
- 85.31m²
- photo :
- 河田弘樹
東大阪市の密集市街地に建つ住宅である。
敷地はかつてアーケードのあった旧商店街に面しているが、すでに屋根は取り去られて多くの店は閉店し3階建の住宅に取って代えられ、歩行者専用の道路標識と店前に残る破けたテントやオーニングが当時の面影を忍ばせているだけだった。
幼少期を近くで過ごし、今はカーテンなど布の意匠計画を生業とするクライアントと、かつての風景と行為を手掛かりとした家とすること、住み暮らしながら破けたそれらを普請していくことを決め、職住一致を基本としたかつての商店街の中へ、どのように新しく参加できるのかを模索した。
まず初めに、旧商店街に面した1階を多目的な土間として町屋のように開き、農業用の布を刺繍した小さなオーニングを出した。さらに軒先から2階の窓を覆うようにより大きく2枚目を垂らし存在感を示し、向かいから道路に越境しながら伸びてくる鮮魚屋のオーニングと共鳴させて場所性強めた。
外壁は周囲の風景に残る押縁下見板張を窯業サイディングを用いて再現し、桁行方向の窓は街並に倣ってプロポーションを決め、手摺を設けている。
1階のパブリックな土間とプライベートな諸室は、階段と天井から垂らした6mのオーガンジーを用いて柔らかく仕切りながらも、意識的には2階と繋がりを持たせた。
2階は1つの気積の中央に入子状に箱を置いてダイニングと寝室を分節し、キッチンの作業スペースは廊下と兼ねることによって省スペース化を図りながら、桁行方向に長い視点場を与えスケールに変化をもたらして、日々の暮らしの中に開放的なリズムを生み出している。
ロフトは主寝室にも子供室にもなり得る未来へのバッファとして設けた。
旧商店街の街角は、真新しいオーニングと新たな住人のパーソナリティによって、小さくも確実に鼓動を始めている。